IoTとは何か、ビジネスに及ぼす影響は?

 最近よく耳にするIoTとは何でしょう。Internet of Thingsの略で、直訳すれば「モノのインターネット」ですが、よくある解説ではパソコンやスマホなどの情報通信機器に限らず、すべての「モノ」がインターネットにつながることを指し、私達の生活やビジネスが根底から変わると言われています。
 実際に世界で起きているIoTの流れを見ていると、「IoTによりビジネスモデルが大きく変わった」とか「生産性が30%アップした」などの声が聞こえてきます。
 個人生活では冷蔵庫やエアコンが、工場ではライン設備が、物流ではトラックがインターネットにつながるというように、IoTとはありとあらゆるモノがインターネットにつながることです。それの何が良いのでしょう。
 IoTビジネスは次のサイクルが基本的な流れになります。

① 「センサー」でモノからデータ情報を取得する 
② インターネットを経由して「クラウド」にデータを蓄積する
③ クラウドに蓄積されたデータを「人工知能」が分析する 
④ 分析結果に応じてモノが作動して人に最適なフィードバックをする

 具体例を挙げますと、いま人材不足や長時間労働が問題とされている物流業界では、全車両と全ドライバーのGPS走行データや移動ルート情報の取得で、空車と貨物をリアルタイムにマッチングさせることで大幅な生産性の向上を図ることが可能になります。また運行の安全確保による経費の削減、交通情報の把握等で作業の効率化を可能にし、収益向上に貢献するといったことが挙げられます。
 IoTビジネスを考える場合、④のフィードバックを意識することが一番重要です。IoTは、単にモノがインターネットにつながることで「モノから情報を取得できる」だけではなく、それを利用し、自社の課題解決がどのようにできるかを考えることが大切でしょう。

既存の産業界を破壊してゆく シリコンバレー

 3 月中旬、サンフランシスコで開催されたM&A 国際会議に参加し、世界を席巻しているシリコンバレー発のイノベーションを強烈に肌で感じてきました。
 シリコンバレーのベイエリアにはApple、Google、Facebook などのインターネット&モバイルの巨人はもとより、自動車配車サービスのUberや、民宿マッチングのAirbnbといった新興勢力が、いままさに世界市場を握ろうと虎視眈々と狙っている、世界で最も熱い地域です。
 IT技術を駆使して、新たな市場を創造し、既存の業界を破壊し世界を一変させた最もわかりやすいのがスマートフォンです。スマートフォンはそれまでの携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ゲーム機、電子書籍等の業界を横串で刺しぬいて、それまでは別々の市場を築いていた産業をすべて呑み込んでしまい、爆発的に成長しました。シリコンバレーは何故このようなイノベーションを次々と起こすことができるのでしょうか。
 いま起きているのは、ソフトウェアによる自動化です。ソフトウェアにより人間の活動を取り込み、変形し、置き換えて自動化する。一見複雑に見える人間の行動も、一連の作業を細かく分解していくと、単純なタスクの組み合わせになることが多い。人間の活動を小さなタスクに分けて定型化し、コンピュータのプログラムによって再現する。コンピュータの処理能力の飛躍的な向上(20 世紀を通してみると76 兆倍)により、人間の活動をマシンが実現できるようになってきたということです。最近のよく聞くクラウド、ビッグデータ、 IoT、フィンテック、人工知能といったテクノロジーはすべて同じ現象から成り立っています。人力で行われていた作業をコンピュータが自動で代替してくれるのだから、飛躍的に生産性は上がり、今までできなかった新しいことができるようになる。まさに既存の業界を破壊する、恐るべきイノベーションと言えるでしょう。
 Google は2025 年に完全自動運転の車を完成させるといっています。世界の自動車メーカーがGoogle に取って代わられる時代が近いかも知れません。
 私達日本企業は、シリコンバレーで生み出される成果と活力を積極的かつスピーディーに自社に取り込むことこそ大切と考えます。

2017年はスピーディーな対応力が必要

 今年の日本経済の行方について、経済専門家はトランプ新大統領誕生の影響が重要なポイントと口を揃えています。
 トランプ氏の公約である大規模な法人税減税、規制緩和の推進、インフラ投資の拡大などによってアメリカ企業の業績改善が進み、景気が拡大するとの期待感が強まりました。アメリカの株価は上がり、ドル高円安が進んで、日本経済にとっては良い状況となっています。しかし、トランプ氏の言動によっては状況が一変するリスクも大きく、今後の動向を世界中が注目しています。特に我が国経済に大きく影響を及ぼす環太平洋経済連携協定(TPP)について、トランプ氏は選挙中から脱退を公約しています。また、北米自由貿易協定(NAFTA)の大幅な変更で、メキシコに進出している日本の自動車メーカーや関連部品メーカーには少なからぬ影響があるでしょう。
 一方アメリカ以外に目を移すと、今年はフランスの大統領選挙やドイツの連邦議会選挙など、欧州の行方を占う重要な選挙が予定されています。先ごろ行われたイタリアの国民投票ではレンツィ首相が退陣に追い込まれるという、既成政治にノーを突きつける動きが広がっています。フランス大統領選で反EUを掲げるルペン党首が仮に当選するような事態になれば、イギリスに次いでEU離脱のドミノ現象が現実のものになる恐れがあります。このような激動する国際情勢の中、我が国経済も様々に影響・翻弄される年となる可能性があり、それを予測することはかなり難しいことです。
 私達にとって大切なことは、いついかなることが起きようとも、その変化にスピーディーに適応し、生き抜いていく逞しさとしたたかさを持った戦略を日ごろから策定し準備しておくことでしょう。
 激動する国際情勢に加え、人口減少による国内市場の縮小などますます厳しさを増す中で、今こそ私達日本の中小企業の素晴らしい技術とスピード感で、変化を乗り越えていく年にしていきましょう。

「中小企業等経営強化法」 7月1日より施行、金融が変わる!

 中小企業の生産性向上を支援する「中小企業等経営強化法」が7月1日に施行されました。わが国のこれまでの中小企業政策は、中小企業を弱者と定義づけた救済型の支援が中心でした。しかし、この強化法は企業を取り巻く経営環境を改善し、中小企業の「稼ぐ力」をアップさせることを目的としており、「本業の成長」にスポットを当て、「生産性を向上させるための集中支援を行う」という、これまでとは真逆の新しい政策です。つまり、「救済支援」から「元気な未来ビジョンを持った企業の支援」に大きく舵を切ったということです。
 平成3年にバブル経済が崩壊し、中小企業の赤字比率が70%に落ち込んで以来すでに25 年になりますが、いまだ赤字比率は70%から全く減っていないという異常な経営状況が続いています。この間、中小企業は赤字であっても国の救済支援によって、保証協会付きでどんどん金融機関から借入ができた「延命処置」的時代が長く続きました。結果的にはそれが中小企業の危機感をそぎ、企業の経営力を弱体化させてしまったことは明白でしょう。今回、国の施策を大きく切り替えたことは、その反省の上に立ったものと考えられるでしょう。
 経営強化法は、今後の中小企業に対する国家政策の根幹をなすものであり、中小企業と銀行の関係においても大きな変化を及ぼすこととなります。金融機関も強化法を重要視していくため、明快な経営改善がない企業にとっては、金融面において厳しく選別されることが考えられます。しっかりとした経営力向上計画を策定することを、今私達中小企業は求められています。

強化法の支援内容

 国が作成した事業分野別の生産性向上指針をもとに、中小企業者等が「経営力向上計画」を作成し、国の認定を受けることで、税制や金融支援等の措置を受けることができます。弊社では、認定支援機関として経営力向上計画の作成・実施を支援しております。担当者までお声がけください。

人手不足が中小企業の最大の経営課題になる時代

 最近、お客様からの相談で一番多いのが「人材不足」問題です。新卒採用はもちろん、中途採用でも応募がほとんどないという声をよく聞きます。特に職人やパート・アルバイトが全くおらず、仕事が回らないという深刻な状況になりつつあります。
 近年は景気が回復傾向であり、有効求人倍率も上昇しているため、人材確保は難しい側面があります。富山県内でも、呉西地区を中心に昨年は大型施設のオープンが相次ぎ、そちらにかなりの人が流れたのは間違いありません。しかし、もっと長期的な根本課題として人口の減少問題、特に15 歳~ 64 歳の生産年齢人口の大幅減少が進んでいることが挙げられます。2010 年のピーク時には8,000 万人いた生産年齢人口が2060 年には4,000 万人まで半減してしまうと予測されています。業界、職種によっては既に深刻な人手不足が起きており、今後ますますそのスピードが加速していくこととなります。まさに人材確保を最大の経営課題として真剣に取り組まなければならない時代となりました。
 求人情報大手のマイナビのアンケートによると、人材が確保できているかの質問に対し、大手企業で6 割、中小企業は3 割しか確保できていないという回答でした。中小企業は採用の応募を集めるところから苦戦をしています。主にハローワークや、縁故や紹介が主な採用手段ですが、売り手市場の現在、それだけでなく、例えば下記のような新たな取り組みが必要となります。

1.募集方法の取り組み
 ・大学、高校、専門学校への直接訪問
 ・有給インターンシップ制度の採用
 ・ホームページ、Twitter やFacebook 等ソーシャルメディアの活用
 ・求人情報会社との提携

2.就業条件の改善
 ・時間外労働の短縮
 ・賃金引上げ
 ・メンタルヘルス対策、ストレスチェックの実施
 ・パワハラへの対策

 さらに上記に加え、会社説明会では企業理念と将来ビジョンを明確に伝え、ベクトルを共
有できる人材を確保することが重要です。

日本経済の回復は、中小企業にかかっている

 アベノミクスが始まりちょうど3年経過しました。円安や株高によって大企業や富裕層が大きく潤った一方で、国民生活はその実感がないばかりか、消費税率アップもあり、むしろ物価上昇のみを感じた3年であったと言えるでしょう。
 国民が景気回復を実感できない状況下で2016年はスタートしましたが、今年は中国や米国など外国経済の減速による影響が心配されます。
 株価が暴落した中国経済の減速は、日本経済に少なからず打撃を与えることとなりますが、日本経済にとって本当に恐いのは、米国経済の減速の方です。貿易統計でみると今でも日本が大幅に貿易黒字を保っているのは米国だけであり、中国やEUに対しては赤字だからです。米国が日本の輸出の下支えをしているのです。米国の経済が好調で一番恩恵を受けるのは、昔も今も日本であることに変わりありません。日本から輸出される部品や素材の大半は、他の国を経由して最終的には米国で消費されているからです。
 上記はマクロ的視点で見た日本経済の先行き懸念ですが、ミクロ的視点で見るならば日本経済の先行きは私達中小企業の成長発展次第と言えるでしょう。日本企業の99.7%は中小企業であり、従業員数では全体の7割を占めています。日本経済の基盤を形成しているのはまさに中小企業です。ゆえに中小企業の成長無くして日本経済の回復はありません。
 昨年発表された中小企業の成長を阻害する経営課題のアンケートでは、人材不足を挙げる企業が多い結果となりました。少子高齢化に伴う人口減少の影響がまさに現実問題になっており、この課題に真剣に向き合わないと私達中小企業の今後の成長発展は望めません。
 松下幸之助さんの「企業は物をつくっているのではなく、人をつくっているのだ」というかつての言葉が、今鮮明に思い出されます。昨年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」で吉田松陰が「あなたの志は何ですか」と塾生に常に問いかけ、「私の志は、この国を良くすることです。志をたてることから、すべては始まる」と説き、志を共有した同志が明治維新を成し遂げていきました。私達中小企業も、社長が目指す企業理念(志)と将来ビジョンを共有できる人材を自ら創造することが今必要です。
 日本の中小企業の真価はチーム力にあります。今こそ大きな志を掲げ共有し、このチーム力を高め成長することが、日本経済の回復の実現に繋がるでしょう。

マイナンバー制度導入の経緯と今後の活用構想

 わが国における番号制度は、急に降って湧いたものではなく、かなり以前からその検討がありました。昭和40年頃の「国民総背番号制」が最初です。折からのコンピュータ化の進展に伴い各省庁でばらばらに附番管理されていたコードを統一化し、行政の効率化を図ることを目的に検討されたものです。しかし国家による個人のプライバシー侵害を恐れる国民の強い拒否反応があり、実現することはありませんでした。
 次に検討されたのは、昭和55年に制定された「グリーン・カード(少額貯蓄等利用者カード)制度」です。当時元本300万円までの預貯金の利子が非課税となる「マル優」制度があり、その不正防止の施策でありました。しかし制度開始前にあぶり出しを懸念した預金者が、仮名預金から大量の預貯金を引き出し無記名の債券や金に変えたため、金融機関等が激しく反対し、これも実施されないまま廃止となりました。これ以降、財務省は背番号制には及び腰になったといわれます。
 その後23年の時が経過した、平成15年に最初の全国的番号制度として「住民基本台帳ネット」が全面稼働し、「住基カード」の交付により行政の効率化を目指しましたが、実際に広く社会で使われる番号制度にはなりませんでした。

 この様にかつて国民の多くに反発のあった番号制度が、今回、大きな反対もなく「マイナンバー制度」として平成28年1月から導入されようとしています。その転換点は平成19年
の「消えた年金問題」です。年金納付や給付の記録は各人ごとのコードによって管理しない限り確実なマッチングは不可能であることが明確になったからです。マイナンバー制度は平成22年より民主党政権下で検討準備され、それを自民党が引き継ぎ平成25年に法案成立したものです。
 今回のマイナンバーは利用目的を「税」「社会保障」「災害対策」と限定して利用されることになっていますが、将来の活用構想は幅広いものとなるでしょう。預貯金口座への附番により税務調査時における確認の効率化、医療分野への拡大として治療データの蓄積による医療費の削減に活用、健康保険証との一体化により不正防止等の実現ができると考えられています。また、戸籍、自動車運転免許証との一元化や学生証との機能一元化も検討されています。マイナンバー法は民間利用を前提に法律が制定されており、将来に向けて様々な分野で利用される可能性が高く、法施行3年後には、更なる拡大活用の検討が進められる予定です。

ASEANマーケット、中小企業進出が激増する

 先月シンガポールで開催された国際会議に行ってきました。これは毎年3月に日本の税理士および幹部職員300名ほどが海外で集合し、当該開催国の現況や経済状況等を、現地講師を招き研修し、我が国との今後の関連を研究するというまじめな会議であります。海外に出て国際的な変化を体感し、そのうえで新たに日本の現況を見つめ直せる大変貴重な機会として、私は15年前の第1回から参加をしています。開始早々は10名ぐらいのメンバーでしたが、年々増加し最近は会場の確保が難しいくらいの大人数になってきています。本年度はASEANの成長をテーマに地元アナリストや大学教授、金融機関、海外進出支援事業者等多彩な講師による熱い話を多く聞くことができ、改めて日本の厳しい現況を考えさせられました。
 ASEANは日本の10倍の面積があり、人口は6億人、平均年齢が22歳(日本は64歳)と若く、これからの爆発的な人口増が見込まれます。それに比し我が国の人口は減少の一途をたどり、2060年には生産年齢人口が半減してしまう、つまりGDPが半分になってしまうということです。このままでは国内市場のみで生きている我々中小企業は半数しか生き残ることができなくなる計算になります。
 このため海外進出の目的も、かつての安い人件費を求めて海外生産した時代から、新たなマーケットを海外に求める時代に大きく変わってきています。海外進出企業のここ5年間のデータを見るとその大半を中小企業が占めており、当初はリスクを感じてためらっていた中小企業が、生き残りをかけて日本での納入先である大企業や中堅企業についていくかたちで現地進出に踏み切った姿が目立ちます。
 中でもこれまで主流の進出先だった中国より、ASEANに進出する企業が激増しています。これはASEANが日本や先進各国より高い経済成長を達成しており、今後も若者の多い人口構成により旺盛な消費や労働力があるため、海外企業の進出が進み、国民の所得水準があがり、中間所得層が増えることにより消費市場は一挙に拡大するので、大変魅力的な市場であるためです。また日本人は文化面でも東南アジアの人々により強い親近感を持っており、チャイナリスク回避の受け皿として最適と感じています。
 我が社のお客様も年々海外進出若しくは海外取引に取り組まれる会社も増加しており、成功事例も増えてきています。成否のキーは日本人派遣者と現地スタッフの管理人材の確保にあります。我が社のパートナー企業の(株)JEC経営コンサルタントもお客様の海外取引をご支援するため、3年前に上海と台北事務所を開設しており、また今年度中にバンコク事務所を出す予定でいますので、是非ご活用ください。

今年の日本経済のゆくえとその対応

 平成 26年の暮れは、国会解散から総選挙とあわただしく過ぎていきました。私は 11月中旬、安倍総理が外遊から帰る直前に、税制改正要望書を持って国会へ行っていましたが、解散を予想してか、国会の中は何か閑散としており異様な雰囲気さえ感じました。
 総選挙は自公民の圧勝で終わりましたが、肝心の日本の経済の方はどうなっているのでしょうか。昨年のGDP成長率は大方の予想に反し、消費税アップの落ち込みが大きく、4 月から 9 月まで 2 四半期連続のマイナス成長という深刻な状況になっています。
 昨年は 10 月の日銀による追加金融緩和に象徴されるように、異次元金融緩和により大幅円安が進み、海外マーケットを目指す大企業と株や資産を多く持つお金持ちは大いに潤いましたが、国内マーケットが全ての中小企業は輸入資材等の高騰が進み、また大手企業が集中する中央と地方の格差は拡大し、低所得者層は物価上昇により実質賃金が下がる等負担が増加しているのが現状です。
 本来これらの対応としてアベノミクス第 3 の矢「民間投資を喚起する成長戦略」が打ち出される大切な時期に、その重要法案を先送りし解散総選挙を実施したことにより、成長政策が大きく遅れたことが懸念されますが、一方 9 月以降の経済指標をみると総体的に上向いており、後半は緩やかに持ち直してくるという見方がされています。また、中小企業や地方活性化支援のための財政出動がさかんに論じられており、早期の政策実施が行われると期待されます。
 しかし、政府ができることは成長のための環境整備の支援であり、自社の成長は私たち企業人自身の責任です。自己改革し利益を確保する必要があります。
 最近、日本の中小企業の利益が少ない理由として、生産性の悪さが強く指摘されています。この課題に取り組むことが今最も重要です。生産性をアップする要因はいくつかありますが、対外交渉の必要がない、自社内で実施できる改革が一番確実です。たとえば ①ロスを減らす②作業時間の短縮 等は直ちに利益増加につながります。どちらにも共通して、準備や段取りの徹底、業務分担の見直し、シフト制や分業化等の検討がポイントになるでしょう。今年の取組みのテーマの一つに考えてみることも一考でしょう。

人口減少時代の経営戦略

 わが国では、2005年から人口の減少が始まりました。当初厚生労働省の人口問題研究所は、人口減少は2007年からと予測していましたが、現実には2年も早まりました。働き手となる生産労働人口は2060年には半減してしまうというショッキングな数値となっています。これまで人口問題は年金や介護の議論が中心でしたが、今後は人口減少が企業経営に与える影響を真剣に検証する必要があります。

 「日本創生会議」によると、人口減少により2040年には全国1,800市町村の半数が消滅の危機に瀕し、その大半は高齢化が進む地方の中小都市で、若年人口の多くは仕事を求めて都市に集まり、地方人口は雪崩を打って減少していくとの試算です。そのため危機感を大きくした安倍内閣は新たに「地方創生大臣」を新設し、人口問題に取り組もうとしています。
 私たち中小企業経営においても深刻な課題が見えてきます。一つ目の課題は供給面における人手不足です。この課題への対応策としては女性や高齢者の積極的な雇用や生産性向上が挙げられます。生産性向上については、ロスの排除や効率アップのための提案が現場から出てくるよう全社一丸となった業務の改革が必要です。
 また、女性の積極的な雇用は経済に大きく寄与することにもなります、内閣府の試算によると、女性の家事や育児といった無償労働を給与に時間換算すると111兆円になり、実にGDPの4分の1に相当します。女性が働きに出れば家事・育児関連サービス消費も増え、一石二鳥というわけです。
 二つ目は需要面の課題、顧客が減り売上が確保できないということです。一生懸命に頑張るだけでは成長できない時代に入っており、厳しい競争に勝つために時代の変化に適応した戦略が必要です。商品戦略やマーケット戦略をしっかり策定し、誰が、いつ、何をという行動計画をたて着実に実行していくことが生き残れる条件となります。