マイナンバー制度導入の経緯と今後の活用構想

 わが国における番号制度は、急に降って湧いたものではなく、かなり以前からその検討がありました。昭和40年頃の「国民総背番号制」が最初です。折からのコンピュータ化の進展に伴い各省庁でばらばらに附番管理されていたコードを統一化し、行政の効率化を図ることを目的に検討されたものです。しかし国家による個人のプライバシー侵害を恐れる国民の強い拒否反応があり、実現することはありませんでした。
 次に検討されたのは、昭和55年に制定された「グリーン・カード(少額貯蓄等利用者カード)制度」です。当時元本300万円までの預貯金の利子が非課税となる「マル優」制度があり、その不正防止の施策でありました。しかし制度開始前にあぶり出しを懸念した預金者が、仮名預金から大量の預貯金を引き出し無記名の債券や金に変えたため、金融機関等が激しく反対し、これも実施されないまま廃止となりました。これ以降、財務省は背番号制には及び腰になったといわれます。
 その後23年の時が経過した、平成15年に最初の全国的番号制度として「住民基本台帳ネット」が全面稼働し、「住基カード」の交付により行政の効率化を目指しましたが、実際に広く社会で使われる番号制度にはなりませんでした。

 この様にかつて国民の多くに反発のあった番号制度が、今回、大きな反対もなく「マイナンバー制度」として平成28年1月から導入されようとしています。その転換点は平成19年
の「消えた年金問題」です。年金納付や給付の記録は各人ごとのコードによって管理しない限り確実なマッチングは不可能であることが明確になったからです。マイナンバー制度は平成22年より民主党政権下で検討準備され、それを自民党が引き継ぎ平成25年に法案成立したものです。
 今回のマイナンバーは利用目的を「税」「社会保障」「災害対策」と限定して利用されることになっていますが、将来の活用構想は幅広いものとなるでしょう。預貯金口座への附番により税務調査時における確認の効率化、医療分野への拡大として治療データの蓄積による医療費の削減に活用、健康保険証との一体化により不正防止等の実現ができると考えられています。また、戸籍、自動車運転免許証との一元化や学生証との機能一元化も検討されています。マイナンバー法は民間利用を前提に法律が制定されており、将来に向けて様々な分野で利用される可能性が高く、法施行3年後には、更なる拡大活用の検討が進められる予定です。