日本経済の回復は、中小企業にかかっている

 アベノミクスが始まりちょうど3年経過しました。円安や株高によって大企業や富裕層が大きく潤った一方で、国民生活はその実感がないばかりか、消費税率アップもあり、むしろ物価上昇のみを感じた3年であったと言えるでしょう。
 国民が景気回復を実感できない状況下で2016年はスタートしましたが、今年は中国や米国など外国経済の減速による影響が心配されます。
 株価が暴落した中国経済の減速は、日本経済に少なからず打撃を与えることとなりますが、日本経済にとって本当に恐いのは、米国経済の減速の方です。貿易統計でみると今でも日本が大幅に貿易黒字を保っているのは米国だけであり、中国やEUに対しては赤字だからです。米国が日本の輸出の下支えをしているのです。米国の経済が好調で一番恩恵を受けるのは、昔も今も日本であることに変わりありません。日本から輸出される部品や素材の大半は、他の国を経由して最終的には米国で消費されているからです。
 上記はマクロ的視点で見た日本経済の先行き懸念ですが、ミクロ的視点で見るならば日本経済の先行きは私達中小企業の成長発展次第と言えるでしょう。日本企業の99.7%は中小企業であり、従業員数では全体の7割を占めています。日本経済の基盤を形成しているのはまさに中小企業です。ゆえに中小企業の成長無くして日本経済の回復はありません。
 昨年発表された中小企業の成長を阻害する経営課題のアンケートでは、人材不足を挙げる企業が多い結果となりました。少子高齢化に伴う人口減少の影響がまさに現実問題になっており、この課題に真剣に向き合わないと私達中小企業の今後の成長発展は望めません。
 松下幸之助さんの「企業は物をつくっているのではなく、人をつくっているのだ」というかつての言葉が、今鮮明に思い出されます。昨年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」で吉田松陰が「あなたの志は何ですか」と塾生に常に問いかけ、「私の志は、この国を良くすることです。志をたてることから、すべては始まる」と説き、志を共有した同志が明治維新を成し遂げていきました。私達中小企業も、社長が目指す企業理念(志)と将来ビジョンを共有できる人材を自ら創造することが今必要です。
 日本の中小企業の真価はチーム力にあります。今こそ大きな志を掲げ共有し、このチーム力を高め成長することが、日本経済の回復の実現に繋がるでしょう。