昨年、我が国大手企業の「海外企業買収」件数が過去最高の634件、金額にして5兆5118億円に上りました。武田薬品がスイスの大手製薬会社、東芝がスイスの次世代電力計スマートメーターの最大手メーカー、東京海上HDが米の中堅保険会社、伊藤忠商事が米の石油ガス開発会社を買収等々、グローバル化の中で、世界戦略を見定めた展開が図られています。一方国内においては、新日鉄と住友金属との今年度合併発表、損保ジャパンと日本興亜が2014年に合併し東京海上日動を抜き首位へ躍り出る等、さらなる国内の集約化が図られています。
つまり大手企業の経営戦略は、人口減で益々縮小する国内マーケットに対しては合併により集約化を進め、マーケットが成長している海外に向けて拡大展開を強化してゆくグローバル戦略であります。両者ともM&A手法により実践されています。現に内需型企業であった多くの企業も、今や海外マーケットが主力になってきています。日用品である資生堂やユニチャーム、キッコーマンが売上の40%以上を、自動車のホンダ、日産、トヨタ、電機のTDK、ソニー、日本電産、素材の日本板硝子、機械のコマツ、ファナック等が70%~80%以上を海外マーケットにシフトしています。
これに対し、中小企業のM&Aはその目的が根本的に異なります。2012年問題といわれている、戦後創業した団塊の世代の経営者が65歳になる今年から10年間で、中小企業の約60%が世代交代を迎えます。しかし、今この世代交代が後継者難という大きな課題に直面しています。昨年末に帝国データバンクが発表した統計によると、国内企業の65.9%が後継者不在であると報告されています。特に年商10億円未満の企業は約7割が不在と言われています。これは ①少子化により後継者である子供がいない ②他の好きな仕事をやりたいので継ぎたくない ③経営環境が厳しいので子供が継げないことが要因です。
この現況は、今後中小企業のM&Aが進むということを示しています。後継者のいない企業は第三者への承継により企業の存続が可能になり、社員の雇用を守ることもできます。また、売却資金で経営者のハッピーリタイアも実現できます。
一方買収企業は、相手企業の経営状態が事前に確認できることで安全性が担保されること、またすでに出来上がっている企業であり、顧客と社員がそのまま引き継げるためスピード成長が可能となり発展の大いなるチャンスととらえることができます。M&Aは経営戦略として積極的にとらえ検討してゆく時代でありましょう。