今年の日本経済の見通しと中小企業の課題

 今年の「日本経済の見通し」の各コラムを読んでいると、メインシナリオとして、東日本大震災発生に伴う「復興需要」に支えられて緩やかな景気拡大が続く見通しです。
復興関連予算は、2012年度の実質GDPを1%弱押し上げることが期待されます。
さらに設備投資関連指標に回復の兆しが生じていることも、日本経済を下支えする要因となるであろうと、楽観的に記されているものが多く見受けられます。
昨年の重苦しい気持ちをふっ切るためにも新年は明るい気持ちでスタートしたいという思いは日本人誰もが同じでしょう。

 しかしながら、次々と停止される原発による電力不足に伴う生産の低迷、またヨーロッパの金融市場の混乱を受けた海外経済の下振れ、そして円高の進行と楽観はできない状況も多く残っています。

 一方、いまだ止まらない我が国のデフレスパイラルは、企業や家計の実質負担を増加させています。
つまりデフレで売値が下落していくことで、借金やローンの実質的な返済額の増加や人件費などのコストが高止まることになり、企業や家計は苦境に陥っています。
またその結果、税収が低下することで日本の財政赤字問題についても大きな悪影響をもたらしています。

 このままでは国家と銀行の格付け低下が進み、もう一つの「失われた10年」を新たに作り出すこととなってしまうでしょう。
日銀と政府が一体となってこの悪いデフレを脱却する政策を強力に実施することが必要であります。

 また金融面においても、「金融円滑化法」の今年3月の期限切れがさらに1年延長されることになりましたが、すでに金融機関による企業選別が進んでおり貸出抑制や資金の引き上げが始まると、退場を余儀なくされる中小企業が増えることも予測され、多難な年のスタートとなるでしょう。

 国内人口減少によるマーケットの縮小も加わる厳しい経営環境の中、私たち中小企業が目指す課題は、従来の「コスト削減」を中心にした経営対策から、もっと積極的に攻める「付加価値創造力の強化と売上増強」の経営戦略へと大きく舵を切ることであり、急務であります。
そのためには、 ①グローバルな視点に基づき海外マーケットを含めた販売市場の拡大(新マーケット開発) ②販売価格の維持や引き上げに向けた他社との差別化戦略(新商品・サービス開発) ③それらを支える人材育成への注力、が大変重要な年となっていくことでしょう。

 この新年幕開けの時期、時代の変化をしっかり捉え、自社の方向性を見直し、勇気をもって新たな成長戦略を見出していきましょう。