大廃業時代の到来

 近年、我が国の経済を支える中小企業の廃業数が年間3万社という危機的な状況になってきています。加えて日本政策投資銀行の調査によると、今後事業承継をせず廃業を予定している企業が全体の40%を超えるとの結果が出ています。廃業理由は当初から自分の代でやめようと思っていた、事業に将来性がないから等様々ですが、その根底には後継者不足が大きく影響しています。問題なのは、その内半数ぐらいは業績の良い企業であり、事業を継続できるにも関わらず、後継者の確保が出来ずに廃業を選択せざるを得ない状況に陥っていることです。廃業になると、これまでの事業経営で培ってきた貴重な経営資源が失われてしまうことになり、また、雇用の維持も出来なくなります。
 後継者不足の原因は、少子化が極端に進んでいるため後継親族がいないこと、また職業の選択肢が昔と違いたくさんあり、家業意識より自分に合った仕事を選ぶ時代感性へと変化していることがあります。一方、現経営者側は事業承継の必要性は認識しているが、毎日の仕事に追われ先延ばしにしてしまっていること、また上記の選択の自由から、子供に対し強く言えなくなっていること等で事業承継が中々進まない現実があります。その結果、社長の平均引退年齢が70 歳を超えるという高齢化が進んでおり、そのことが廃業数を押し上げている原因にもなっています。
 事業承継は経営者の最後の仕事であり、後継者と共にしっかり承継計画を策定する必要があります。経営資源を抽出し自社の強みを承継させ、業績検討会や経営計画に早くから参画させ経営力を磨き、時代変化に合った経営戦略を構築していかねばなりません。後継者が経営を失敗しないため、承継は社長が時間をかけ実践の中で教えていく、10 年計画で行う大仕事であります。早く着手することが重要ポイントです。
 また、後継者が決まらない場合は、M&Aにより、会社ごと他社に引き継いでもらうことも可能です。いずれにせよ早目に方向性を決定し、社長が生涯をかけて築いてきた会社と社員およびお客様を守っていくことこそが大切です。