2019年 経済見通しと中小企業の生産性向上

 第2次安倍政権の発足と同じ2012年12月に始まった現在の景気拡大期間が、2019年1月には戦後最長の景気拡大期(2002年2月~2008年2月までの73ヶ月)を抜いて、最長記録を更新すると予想されています。
下振れリスクとしては、米中貿易摩擦や欧米の政治的混乱、米国の金利上昇等、世界経済の悪化懸念があります。
一方国内では10月の消費税率10%への引き上げがありますが、2%と小幅であり、一部軽減税率やポイント還元等の施策もあり、駆け込み需要や反動減も、前回ほどではないと考えられます。
2020年は東京オリンピックもあり、大方のシンクタンクは、実質GDP成長率はプラスを維持できると予想をしています。

 しかしながら、私達中小企業は景気拡大の実感を、そこまで感じることが出来ません。それは材料や運賃、人件費等すべてのコストが上昇している一方、販売価格への転嫁が難しく、収益を圧迫しているためです。
収益改善のためには生産性の向上を本気になって取り組む必要があります。生産性向上は顧客や仕入先、社員の誰にも負担を強いるものではなく、自らの変革でできることです。日本の時間当たり労働生産性は46ドルで、主要先進7カ国中最下位です。そこで政府主導で生産性向上の施策が色々と行われていますが、中小企業ではどう取り組めばよいか悩んでいるのが実情です。
企業が利益を出すためには、儲かる仕事を増やし、儲からない仕事を減らすことが肝心です。しかしその区別ができる基準を持っている企業はあまり多くありません。そこで賃率という考え方を用いることで、基準を持つことが出来るようになります。
賃率とは時間当たりの生産性(稼ぎ高)のことを指します。
分かり易く言えば目標限界利益(売上-変動費)を直接作業時間で除したものが目標賃率となります。基準となる目標賃率を設定し、現状の製品ごとの賃率(実質賃率)と比較することで生産性の課題を見出すことができ、経営判断の基準が持てるようになります。

<事例>
目標売上   100,000千円
目標限界利益  60,000千円
目標固定費   50,000千円
目標経常利益  10,000千円
直接作業時間  12,000時間
目標賃率    5,000円/H

 例えば目標賃率を5,000円とすると、それ以下の製品は見直すことが必要です。
 無駄な工程、ロスの排除、能力向上による時間当たりの成果増、不採算部門の縮小、採算部門の増員等、経営戦略の見直しにつながることでしょう。