いまこそ借入依存経営からの脱却が必要

 新年記者会見で、日本の経済団体の首脳はそろって国内外の景気について厳しい状況の認識を表明しましたが、まさに「世界同時不況」から「世界恐慌」の様相を呈してきております。当然私たち中小企業経営者にとっても、今まで体験をしたことのない厳しい経営環境が続くことになります。特に今回の不況は金融危機に端を発しており、借入に依存してきた多くの中小企業が、借入がスムーズにはいかなくなるという危機的な問題に直面しています。それは企業倒産が続出することを意味しています。いま大切なことはこの苦境をチャンスと捉え、経営のやり方を大きく転換する、つまり借入依存の経営から脱却することであります。
 本来企業が借入を必要とするのは、不動産や大型設備の購入等投資効果が長期にわたるもののみで、運転資金や在庫、車両、備品等の資金は年度利益で賄うものであります。大型投資にしても過去の蓄積利益である自己資金で3分の1程度は出したいものです。また借入金返済額は減価償却費の範囲で納めると、利益トントンでもキャッシュフローは回る、つまり欠損にさえならなければ大丈夫ということです。一方、利益確保は固定費の70%が人件費であるため、常に売上に応じた人件費のバランスをとることが重要であります。そのためには、先行きの予測をしっかり見通す能力が必要です。これからの経営には、先行きを数値でしっかり確認し、対応策を事前に打ち、それを実践行動管理する「経営計画の策定と業績管理の仕組みづくり」が絶対の必要条件であります。
 創業当初の経営者は誰もが無謀な投資は決してせず、自分の身の丈の範囲で堅実な経営をしてきたはずです。それが高度成長期からバブル時期とずっと右肩上がりの経済に慣れてしまい、経営者にとって一番大切な危機管理が忘れ去られた結果、借入依存の経営になってしまいました。
 「原点回帰」・・・初心に帰り経営することが不安感を払拭してくれるでしょう。

事業承継対策は大丈夫ですか?

 近年、経営者の高齢化が進行する一方で、後継者対策を行っていない会社が多く存在します。後継者がいないという理由で廃業する会社が年間約7万社存在するといわれ、事業承継が円滑に出来なかったために紛争が生じたり、会社の業績が悪化するケースも多く存在します。現在、中小企業において事業承継問題は非常に重要な問題になっているのです。
 事業承継の選択肢としては下図の通り大きく4つに分類されます。

 (1)の株式上場はごく一部の会社が選択できる例外的な選択肢であります。
 次に(2)の後継者への承継を考えます。社長の御子息等、親族への承継が一般的ですが、御子息が会社を継ぐ場合には社内・社外での経営者としての教育が必要であり、また経営権の集中を図るための株式等事業用資産の後継者への集中、株式の相続にかかる相続税対策等、先を見据えた対策が必要です。親族に後継者がいない場合、従業員による承継を考えておられる経営者は多いと思われますが、従業員に株式を買い取る資金が無く、さらに借入金に対する社長の個人保証の引き継ぎが行えないという問題があります。現状においては、従業員への事業承継は経営と所有(オーナー)の分離を図らない限り難しいと認識しておいた方がよいでしょう。
 更に(3)のM&A(第三者への事業承継)について考えます。この場合、事業の存続と従業員の雇用確保を図れ、社長本人の個人保証も外され株式売却によりハッピーリタイアの実現が可能となります。しかし、その為には周到な準備と売れる会社にする為の「会社の磨きあげ」が必要となります。
 (1)~(3)の事業承継対策に失敗すると(4)の廃業となりますが、この場合従業員はすべて解雇され、各取引先への影響も懸念されます。また会社を清算したとしても、会社資産は簿価の数分の一程度に評価され、借入金の返済にも足りず莫大な負債のみが残るという場合が多く、廃業は回避すべき手段と言えるでしょう。
 円滑な事業承継を可能にするには、早めに的確な事業承継計画を立案する必要があります。事業承継対策は通常10年程度先を見越して行うことが必要です。
 トマック・Jタックスにおきましても事業承継の様々なパターンに対するご相談を広く承っております。お独りで悩まずに是非とも弊社までお気軽にご相談下さい。

銀行融資が厳しくなる!

 最近、毎日のように新聞に地元企業の倒産の記事が目立つようになってきました。これには地域金融機関の不良債権に対する政策変更の要因があります。90年代後半に広まった金融危機は、メガバンクの不良債権処理の終結により沈静化していますが、地銀以下の地域金融機関においてはまだ済んでおらず、これが大きな問題となっています。地域金融機関は、おもに地域の中小企業を対象とした融資をおこなっています。故に、低迷する地域経済格差の影響をもろに受けること、また地元中心に営業していることから、なかなか不良債権を切り捨てられないという苦しみがあります。しかし、金融庁は金融破綻の懸念から抜け出せない地域金融機関に対し、自己査定の強化を指導しました。
 銀行から融資を受けている企業は、全て銀行の自己査定(企業の通信簿)により査定されています。この自己査定という作業は年2回あります。支店において、融資先を査定した後、金融庁からその査定が正しいかどうかヒアリングを受けます。支店長と融資担当者が銀行の本部に呼ばれ、支店の査定が甘い企業があると、金融庁の職員から厳しく追及され、査定のランクを落とされることになります。自己査定により、企業は「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先以下等」に分けられます。銀行は「要管理先」以下の企業の貸付には回収見込みが無いので、15%~100%の貸倒引当金を取らねばならないことになります。要するに貸付金を損失に落としなさいということです。銀行の経営成績に大きく響く問題であります。
 自己査定の基準はそれぞれ各金融機関で定めますが、イメージではメガバンクが最も厳しい基準になっていました。地銀はそれよりゆるく、また信金ではさらにゆるいものとなっていましたが、今回金融庁はこの自己査定の基準が甘いのでメガバンク並みの査定基準の統一化を指導したということです。それにより、最近以前と比べると、正常先以外はなかなか融資がスムーズに通らなくなってきております。この状況をふまえ、企業側は早急に財務体質の改善を求められており、対応できない企業は退陣を余儀なくされていきます。利益の確保と資金を見直し「正常先」になるための取り組みが急務です。そのためわが社では「年当初の予算策定と半期の見直し業績会議」を重要なお客様支援業務として取り組んでおりますので、是非ご活用ください。一方、今年はかなりの倒産が出ると予測されますので、不渡手形等の貸し倒れに気をつけることも重要で、取引先の再チェックが必要です。

企業と社長の「賞味期限」

 昨年、食品の「賞味期限」が社会問題化し、あちらでもこちらでも「お前もか!」の状態が続いた。食品衛生法には、「消費期限」「賞味期限」の2種類がある。消費期限は品質の劣化の限度であり、賞味期限はおいしく食べられる期限である。消費期限の貼り直しは論外だが、賞味期限は案外騒ぐほど私たちは意識していないのでは無いだろうか。
 世代間にも大きく違いがあるようである。我が家でも、私や家内は戦後の食糧難の時代に育っているせいかあまり気にならず、自分の舌で賞味期限を判断しているが、子供たちはシールの確認が先であり、娘が里帰りすると、我が家の冷蔵庫はほとんど空になるくらい捨てられ、いつも母親のストレスを増大させるところとなっている。
 ところで、この機会に企業や社長の賞味期限を考えてみることにした。先ず「企業の寿命は30年」という分析結果があるが、寿命は消費期限切れであり、そこに至る賞味の維持継続ができなかったということに他ならない。
 それでは、長寿企業になれる条件とは何かを考えてみよう。シェル石油が以前発表した、長寿企業の共通要因の研究によると、以下の4点がある。
  ① 環境の変化に敏感である
  ② 事業の独自性と社員の結束力がある
  ③ 分散的に経営される自由度がある
  ④ 財務的には保守的である
 要約すると、環境変化による改革を明確にし、それをスピーディに実行に移せる柔軟な組織力を持つことである。わかり易い事例をご紹介しよう。
 かつては幾多のメジャートーナメントで栄光の時代を築きながら、その後どん底の6年間を過ごし、数年前、「奇跡の復活」と呼ばれたゴルフの中嶋プロのケースである。しかし、中嶋プロは「復活という言葉は違う、復活は人間にはできない。老化してゆく身体や脳に合わせて、全く新しい中嶋に生まれ変わったんだ。むしろ新生中嶋と呼んでほしい」と、過去の成功体験の否定と自己改造こそが勝利の要因と語った。スランプに陥った当初は、好調であった過去を思い出そうと苦しんだが、自分を見つめ、常に年齢に応じたスイングやゴルフに生まれ変わり続けることこそが課題と気づいてからは、ゴルフが楽しくなったという。
 企業にしろ社長にしろ、大きな変化の潮流の中に生きており、常に過去の成功体験を否定し、生まれ変わり続けることこそが未来を創造する条件であることを示唆している。

安倍総理退陣と二代目経営者の帝王学

 今回の安倍前総理の「所信表明」直後の退陣は、多くの国民にとって驚きと失望を与えることとなってしまいました。安倍政権は安倍前総理のその若さと、サラブレットであること、そしてなによりも誠実味のある人柄に多くの人が期待を抱いてスタートしたはずですが、あまりにも早くあっけない政権崩壊に言葉を失ってしまいます。社民党の福島党首の「お坊ちゃまの我がまま・・」という発言がありましたが、二代目の弱さなのでしょうか? しかし小泉元総理も福田総理もみんな二代目です。まさに政治の世界は二代目の時代に入っているのです。
 一方、私たち中小企業経営者はというと、二代目から三代目に入ろうとしており、同じ問題をかかえているといっても過言ではありません。今回、多くの経営者は「経営が苦しいからといって、簡単に社長を下りられるわけではない!」と、納得のいかない思いを感じたことでしょう。しかし、企業経営においても同様のことが起きております。
 オーナー社長の子息が、社長の大変さを親を通して見ており後継したがらない、また一旦入社しても自分の意にそぐわないからと辞めて行く等、事業後継が今まさにピンチの状況であります。このままでは中小企業が崩壊し、それは日本経済の崩壊をも意味します。
 今私たち中小企業経営者は、自らの後継候補に対し責任を持ってしっかりとした帝王学を教えていかねばなりません。社長業とは、とてもやりがいのある仕事だけど、反面人知れず苦しむことも多く、「苦しいことに直面した時こそ、社長としての真価が問われる」ということ、また、「わが社を支えてくれている大切な社員と顧客は命をかけて守りぬく強い信念を持つ」ということ。そのことが真に責任を持った逞しい経営者を育んでいくのです。

「実感のない景気拡大」と「企業間格差」

 2002年に始まった今回の景気拡大は今年で丸5年を超え、戦後最長となりましたが実感がありません。それは、今回の景気拡大は、「戦後最長」であっても「最大規模」では無いと言う事です。「いざなぎ景気」の時は、同じ5年でパイが倍以上になったから、みんなが好景気の恩恵を受けることができたけれど、今回は4%しか増えていないためパイの分け前を受けられない人の方が多いからです。最近よく言われている「格差」であります。
 格差の種類にはいくつかあります。①企業規模別では、リストラと海外生産シフトを終え輸出が好調な大企業と、その狭間で苦しみ今なお水面下にある中小企業 ②企業利益は上がった大手企業も、今後の国際競争力に不安を抱いているため、幹部クラスの給与は上がったが一般の給与は上がっていない。また③バブルに近い活況を呈している東京近郊と地方の格差も益々大きくなる。そして最近は④経営力の格差が大きな「企業間格差」を生み出しております。
 戦後、今の日本経済を支えてきた父親たちの時代は、基本的な枠組みは対米依存でありました。そしてみんな若くて貧しかったから、アメリカの背中だけを見て一生懸命頑張っていればよかった。
しかし今は、中国をはじめとしたアジアの台頭による影響を直接受けるようになりました。国内的にも人々は豊かになりかつ高齢化してきています。一方ITがすごいスピードで普及し、環境への配慮も必要な時代になりました。
この変化は、経営を非常に複雑なものにし、いまや先見性やスピードという総合資質を持った経営者でなくては、生き残れない時代に入りました。
 めまぐるしい環境変化は、何もしない受身の企業にとっては逆風でしかありませんが、積極的に受け止める企業には大きなビジネスチャンスです。
変化を捉え(情報)果敢にチャレンジし(行動)スピーディーにビジネス化する(仕組み)企業こそ、この格差社会を乗り切って成長発展を続けることができるのです。